都内に6店ある同名のお店のひとつである。このお店も当然他店と同様民芸調の内装に益子焼の器。未だに伺う機会を得ない、横浜関内の本家の流儀をしっかりと守る。 当然のことながら「志な乃」定番の「合盛り」をお願いする。 運ばれてきた「合盛り」を見て私は驚いた。 なぜなら、当店の蕎麦とうどんがかなりの細切りだったからだ。 他の5店は多少の違いはありこそすれ、蕎麦 |
は「田舎風」と呼ぶに相応しい野太い麺で、うどんも少なくとも通常のうどんの太さはあるものだ。 ところがまず当店の蕎麦は「切りベラ23コマ」とまではいかないまでも、ほんの少し太めの「せいろ」蕎麦と言ってもいい程の細さである。色は濃い目のあずき色。一番蕎麦らしい色である。綺麗に揃えて盛りつけてある。この丁寧な盛り付けも「志な乃」の特徴である。蕎麦の香ばしい匂いがただよってくる。口に含むと抜群のコシとシャープなエッジ感。噛むほどに甘くて香ばしい蕎麦味が口一杯に広がる。つゆを全く使わずに麺だけでドンドン食べることのできる実力である。また、ネギ、山葵、大葉、大根おろし、おろし生姜と5種類の薬味が丁寧に添えられているのがうれしい。パターンとしてはネギと山葵を蕎麦に使って、残りの薬味をうどんに使う。 そのうどんだが、これこそ特筆ものである。少し普通のうどんより全体にクリーム色なのだが、細かく言うと外周部は白く透明で、芯の方は濃い目のクリームをしている。太さはうどんとしてはやや細めかもしれない。多分冷麦になるともっと繊細になるのだろう。箸にとって口に運ぶと口ざわりは柔らかいのに、噛みにいくとぐっと歯ごたえが増し、コシの強さを感じる。「美味い」。素のうどんに味がある。薄口のつゆに浸す。うどんだから生姜の番だ。これがまた合う。 ということで、当店のうどんは銀座「さか田」などで供される「讃岐うどん」などより遥かに遥かに美味しいと思うのだ。 数ある「志な乃」の中で、私は当店と愛宕を強くお勧めする。 ▽夜伺って、「そばがき」も食べて見た。絶品。愛宕と同じく「掻きっぱなし」のほくほくそばがきを「生醤油」で山葵とねぎと鰹節でいただく。最高。至福の時である。そばがきも愛宕・東日本橋、甲乙つけがたい。 |