このお店は駅から遠い。「橡」が練馬駅のすぐそばなのに対してこちらは歩くと15分はかかるだろう。車で行くとしても大きな通りから一本中に入った閑静な住宅街の中にあるので探すのはちょっと難しいかも。 実はその「大きな通り」をずっと環七まで行くとそこがちょうどこちらのご主人が修行されたあの田中屋がある。田中屋からの暖簾分けは限 |
られているそうなので、よほどの腕前なのであろう。 上の写真で人が待っているがその左に見えるのが左の写真の石臼である。この奥にももう一台石臼があった。左のパネルには今日の蕎麦の産地や香り、水分などが表示されている。その向かい側、ちょうど人が立っているところの前には左下の写真のような綺麗な花をつけた枝が活けてあった。順番を待つ間も退屈しない工夫であろうか。店内は結構広くテーブル席と座敷がある。休日の午後2時を回って |
いるというのにご覧のとおりの行列である。実は中にも待つ人のための席がありそこからの列なのである。 待つことしばし、席に案内されてまずは、普通のせいろをいただいた。明月庵中村屋的なお蕎麦を想像していたが、かなり違った。後で「手挽き田舎蕎麦」(限定20食)を食べるつもりで、先に普通のせいろをお願いしたのだが出てきたせいろからして既にかなりの田舎風であった。切り幅は太過ぎず、細過ぎず、せいろとして最適な幅。表面はやや濃い目のお色で甘皮の破片らしきものがやはり点々と散らばっている。僅かにザラっとした表面。強烈なコシと弾力、シャープなエッジ感。ほんのりと甘い蕎麦の旨味が滲み出てくる、そんな麺である。せいろの「洗練された切れ味」と田舎の「野趣」がマッチした「都会派田舎」という感じである。つゆは明月庵を彷彿とさせる風味がある中にしっかりとした絡 |
み力を備えている。強烈な麺によく食らいついてくる。なかなかのバランスである。さてお待ちかね「手挽き田舎蕎麦」の登場である。これはさっきの都会派田舎の都会派を残しながらさらに時代をもう200年位遡った感じの「超田舎」である。石臼もきっとこの何世紀もの間にずっと進歩したであろうから室町時代や江戸時代、そして今日の石臼とは決して同じではないだろう。しかし、その石臼を手で回して挽くと言う作業そのもの本質はそんなに変わりようがない。ならば大昔蕎麦の実を石臼でゴーロ、ゴーロ挽いた粉で蕎麦切りを作ったならこんな風になったのだろうな、とそんな想いにとらわれた。色もさらに濃くなり、ザラザラ感も増す。それでいて細身の切り幅が洗練された歯触りを残す。強烈な風味、強烈なコシ。都会でいただく田舎としては最高の逸品と思えた。 なかむら 「田中屋」は素晴らしいお店である。 練馬区中村2-5-11 03-3577-6767 (地図は左の住所をクリック) 月曜日・第三火曜 休み 11:00-15:00 17:00-20:00 |