↑住宅街に佇む「坐忘」 | 仏教空間を感じさせる店内 |
↑茶室のにじり戸を思わせる低い入口 | 三色。上から「よもぎ」、左が「せいろ」、右が「田舎」。時間を置いて順次出てくる。下が、そば粉と抹茶のお菓子。 |
前からぜひ伺いたかったお店である。住宅街の中に、目立たぬこげ茶色の塀。その前に立ちながら暫く辺りの様子と手にした地図とにらめっこしてしまうほど、この店は静かに佇んでいた。 一歩、歩道から中に踏み込むと、そこには障子貼りのにじり戸が。相当屈まないと入れない。戸を開けた先に広がる空間に思いを馳せて、ちょっと、ドキドキする瞬間だ。 |
中はほの暗い。外からの光も照明もあるが、空間に自分自身が静かに馴染む、そんな明かりの取り方である。 いろんなそばを試してみたかったので、三色をお願いする。 最初は、のびやすい「よもぎ切り」。蓬はちいさなころ野原でたくさんつんで家で団子にしたものだ。そのころのちょっと切ない思い出をよみがえらすようなそんな香りのするそばが出てきた。香りと舌さわり。この二つが身上の変わりそば。素晴らしい出来栄えであった。つゆは要らない。 次はせいろ。これも芳醇な蕎麦の香りが素晴らしい。ちょうどよい切り幅。しっかりしたコシとシャープなエッジ感。せいろそばはかくあるべしというような仕上がりである。 つゆでもいただく。つゆも、出汁の風味が効きながらも、しっかりとした絡み力を持っている。力強いそばとも十分に伍した力を持っている。 最後は田舎。やや太め。しかし、それほどは太くはない。せいろよりさらに一層蒸せかえるようなそばの香り。この野太い味わいのそばにもさきほどのつゆは強力に絡んでいく。 本当の話、すべてのそばをつゆをつけずとも全部食べることができたであろう。 外装、内装、そしてそばのお味。どれをとっても素晴らしいお店である。八王子には奇跡のようなお店が多いのはなぜ? 東京都八王子市千人町3-14-11 0426-61-2945 (地図は住所をクリック) 水曜休 11:30-15:00 17:00-21:00 |