(まだ1度しか伺っていないので第一印象のみ)
東京城南地区からはちょっと「遥々」という感じであったが、ついに伺う機会を得た。写真のとおり真新しいビルの一階にあり、入り口左側が外からもよく見える打ち場である。外からのぞくと、立派な石臼や大きな朱塗りの木鉢が見えた。 店内は広く、テーブル席と |
奥がかなり広い座敷になっており、襖で完全に〆きって中で宴会もできそうである。各席はかなりゆったりと作ってあり、広々として気持ちよい。 さて、初めて伺ったことでもあるし、そうしばしば来れるものでもないので、一杯試してみたかったのだが、実は昼は久しぶりに目黒「一茶庵」で軽く食べたばかりであったので、そんなに腹も減ってもおらず注文を決めかねていたが、「小せいろ4種」(ごめんなさい、メニューの名前間違っているかもしれません)というのが目にとまったので、それにした。待つことしばし、まず最初に運ばれてきたのが「さくらの葉切り」(と女の子は説明してくれたと思う)である。先日、駒形「蕎上人」で「さくら切り」を食べたが、あちらはピンク色であったが、こちらは「さくらの葉」だから濃い目の緑がかったそばであった。まずは風味を楽しむためにつゆ抜きで噛み締めてみた。ほんのりひろがるさくらの葉の香り。季節を感じさせる一品である。次に運ばれてきたのが、「さらしな」である。「しらゆき」と呼びたくなるほど真っ白なそばであった。歯ごたえも極めてしっかりしていた。ただ、「さらしな」であるから、当然のことながら蕎麦の風味というものはない。白色の鮮やかさと歯ごたえ、のど越しで味わうものであろう。さて、次が「田舎」である。私はこの田舎が4種の中でも出色と感じた。4種の中では際立って美味しく感じた。適度な太さ、田舎を感じさせるに必要最小限の適度なザラつき感、しっかりしたコシの強さ、そしてなんとも言えない色合い。ちょっと透明な灰色のような、それに蕎麦の甘皮の破片が散りばめてあるような、それでもやっぱり全体としては薄い茶色のような・・・。要するに色が濃くて、せいろよりもちょっと太くてという一般的な田舎とはちょっと違うのだ。この色合いは、私が愛して止まない新井薬師「松扇」でも、似たようなものを見た(と思う)。この「田舎」を口に含むと「あー、これだ。自分が求めている「田舎」とは」と思った。つゆを付けずに口に含む。外見と寸分違わぬコシ。そして爽やかな香り、歯ざわり、舌さわり、頬ざわり、のど越し全ての面でこれほど素晴らしい田舎に出会ったことはなかった。それにからむつゆもだしが効いていて奥深い味わい。蕎麦の力強さに決してひけをとらない「からみ力」を持っていると思った。そして最後は「外一(でしょ?)」のせいろ(もり?)。正直、強烈な田舎の後で、この外一が来たので、外一についての印象は薄くなってしまった。三色だ、五色だ、と食べるといつも、どれかの印象が強過ぎて他のものが霞んでしまうことが多い。今回も強烈な「田舎」のお蔭でその後の外一を落ち着いて食べる余裕がなかったのが残念である。次回伺ったときにはもっといろいろなものをじっくりと味わってみたい。お酒も銘酒が揃っているし、酒肴類も豊富。暖かいものでは「鳥団子南ばん」を食べてみたかった。(2000.4) |